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【じわ怖】じわじわ来る怖い話まとめ

【じわ怖】じわじわ来る怖い話をまとめました!サラッと読めるものの実際起こってしまいそう、後味が悪い、人間が怖い。ふとした瞬間に思い出してしまい、じわじわと来る感覚をお楽しみください。

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【じわ怖】卒業式の後

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高校の卒業式が終わって、
担任教師を交えた全員参加のクラス会(謝恩会兼食事会)があった。

先生が参加していることもあり、
酒類は出されなかったけど、
予定では4~8時、その後は期限なしの二次会が、
先生の黙認のもとで開かれることになっていた。

俺は高校生活(もう10年近く前になる)を、
端から見ればそれなりに謳歌してるように見えたと思う。

クラスでは、というか
学年全体でも人間関係をソツなくこなし、
愛想良く振舞っていたからだ。

しかしそれは上辺だけの付き合いにすぎず、
親友と呼べる友達は一人としていなかった。

中学時代は誰とでも気兼ねなく付き合えていたのに、
高校に進学してからというもの、
どう人と接していいか分からなくなっていた。

嫌われるんじゃないか、
誤解されるんじゃないか、
そんな漠然とした不安から、
本音でぶつかるのが怖くなっていたのだ。
(そういう経験あるよね?それのちょっと深刻版かな)

今となってみれば笑ってしまうような悩みだけど、
あの頃は本当に切実で、
胸が張り裂けるような思いをしていた。

そんな悩みは最後まで解消されることはなく、
泣いたり笑ったりして
思い出話に花を咲かせる同級生たちの姿を見るにつけ、
俺はいたたまれなくなり、クラス会を途中で抜け出した。

5時頃だったと思う。

案の定誰も、
何も言わずに消えた俺を追って来てくれる奴はいなかった。

俺が消えたことに気付かなかった人のほうが多かったんじゃないかと思う。

まっすぐ家に帰ろうと思ったけど、
なぜか埠頭が頭に浮かんだ。

市内に埠頭があるのは知っていた。

行ったことはないけど、
場所は大体分かる。

この春から大学進学のため地元を出るから、
最後に行ってみようかと思った。

今思えば、
この時すでに『呼ばれて』いたのかも知れない。

もちろん、
その時は知る由もなかったんだけどね。

埠頭はイメージ通りのコンクリート打ちっぱなしで、
寂れた場所だった。

ドラマで見るのと同じ光景だった。

自転車を止め、
コンクリートの地面に腰を下ろし海に足を投げ出して座る。

田舎なのに海が汚かった。

近くの小石を触ったり海に投げ入れたりしていると、
自然に涙が出てきた。

俺の高校生活、何もなかったなぁ。

そう思うと涙が止まらなかった。

近くに人の気配はない。

寂れた場所で良かった。

頭の隅でそう思っていた。

30分くらいそうしていると、
自転車を漕ぐ音が聞こえた。

Sさんだった。

Sさんは同じクラスの女子で、
一年間委員長を任されていたような、
しっかりした女の子だった。

それほど仲が良かったわけじゃないけど、
同級生とは思えない落ち着きをもった大人しい人で、
誰からも好感(というよりは信頼や尊敬の念かな?)を
もたれた人だった。

「やっぱりここにいたんだね」

と、自転車に跨ったまま言う。

やっぱり?

ここに来たのは初めてなんだけど…

そんなことを思ったが、
今はそれどころではない。

涙をどうにかしないと。

眠たいフリをして涙を袖で拭いた。

泣いていたのがバレていない筈はなかった。

「まだちょっと寒いね」

そう言ってSさんは、
少し間を置いて俺の隣に座った。

Sさんは、
一般的には美しい人ではなかった。

がっちりした体格で、
癖毛の髪は短く、目も細くて、
一見して取っ付きにくい印象さえあった。

でも何故か、
学校で一番男前のTという彼氏がいて、
俺は不思議に思っていた。

「何でここに?」

やっと出た声は情けないほど上擦ってしまう。

「もしかしてここかなって思って来てみたら、
やっぱりここだったってだけ。たまたま」

と微笑む。

続けて、
どうしたの?とは聞かれなかった。

Sさんらしい思いやりのある配慮だった。

優しい無関心。

そんな言葉が浮かんだ。

「いやぁ、もう何かいたたまれなくて。
もう何か『いいや!』ってなっちゃって」

「そっか……」

情けねー!!

海に飛び込んで藻屑と消えてしまいたかった。

でもSさんになら、
この煩悶とした気持ちをぶちまけてもいいんじゃないか。

いいや言っちまえ!

そう思った。

開き直った俺は、相手不在の恨み辛み、
今までの後悔、これからの不安、愚痴以下の不平不満を並べ立てた。

Sさんは何も反論することなく、
丁寧に相槌を打ってくれていた。

その最中、
俺は自分の膝や手を見て話していたのだけど、
ちらりと見やった海に何かが浮いているのが見えた。

話しながらも目を凝らしてそれを見ると、
どうやら椰子の実のような物が二つ、
こちらの方へ流れてきているらしかった。

しばらくしてその椰子の実のような物は、
人の形をしている事が分かった。

気味が悪いと感じながら、
俺はSさんに話すのをやめなかった。

聞いてほしいことが次から次へと溢れ出て、
自分自身こんな事を思っていたんだと呆れ、
また気付かされもした。

途中Sさんに目をやると、
Sさんもその椰子の実のヒトガタに気付いていたらしく、
難しい顔でそれを見ながら、
俺の話に相槌を打っていた。

ところでSさんには、
俺にとって忘れられない、
こんなエピソードがある。

いつか保健体育のテストの答え合わせがあった時だ。

それは返却されたテストの回答を、
一人一問ずつ答えていくというもので、
保健体育のテストだから男子はもちろん、
女子には特に答えにくいであろう問題もあった。

『精子』

確かに口にするのは憚られる。

「分かりません」

と、分からない筈はないだろうに、
女子たちは恥ずかしそうにその答えを回避していた。

みんなもそれを分かっていたので、
くすくすと笑い声もあがっていた。

答えはどんどん先送りされ、
先生も何も咎めなかった。

間の悪いことに、
回答順はしばらく女子が続く。

こりゃ男子まで回るな…

そう思っていた時だった。

順番はSさんだった。

「精子」

Sさんは強調するでも遠慮するでもなく、
落ちているものを拾うみたいに、
自然な所作で答えてみせた。

教室は一瞬静まりかえって、
すぐに次の答えに移った。

俺はその時Sさんに、
大袈裟だけど一種の気高さみたいなものさえ感じた。

皆もそうだったのか、
その後誰もその事をネタにしたりする奴はいなかった。

椰子の実のヒトガタの姿が、
いよいよはっきり確認出来る距離まで流されてくると、
Sさんの顔は難しい顔から、
睨み付けるような険しい顔に変わっていた。

そう言えばSさんは、
神社か寺だかの娘だと、
誰かが言っていたのをふと思い出した。

この時、何だか視野が突然狭まった気がしていた。

でもそれは涙が乾いて、
睫毛にくっついていたからだと思っていた。

ああ、やっぱり人の形をしてるなぁ…

狭くなった視野でも見えるくらい近くまで来ると、
ほんとに椰子の実の材質というか、
色ツヤをしているのが分かった。

大きさは、
雛人形が一回り大きくなった程度だったと思う。

頭があって、
四肢にあたる突起がある。

それが二体。

本当に人形のように見えた。

その椰子の実のような物を見ていると、
急にSさんが大声で叫んだ。

「こっちに来るな!帰れっっ!!!」

凄い声量だった。

いきなりの出来事に、
海にずり落ちそうになるほど驚いた。

にもかかわらず、
俺は不平を話し続けている。

そこでようやっと、
自分自身に起きている異変に気付いた。

Sさんの気勢に押されるよう椰子の実のヒトガタは、
二体とも元来たほうへ押し流され、
やがて波に浚われ見えなくなった。

そこでようやく俺は、
話すのを止めていた、
ということに気付いた。

慌ててSさんの顔を見る。

「今の何!?俺どうかしてた?」

「最後の方、
君の話じゃなくなってたでしょ?」

と言い、

「口を借りられたのね」

と笑う。

「今の椰子の実みたいなやつに?
アレは何だったの!?
何であんな物が…」

Sさんは考え込んだ。

眉間にシワが寄って、
眉毛が八の字になった。

どう言ったものか、
そういう表情だった。

確か神社だ。

寺じゃない。

巫女さんだ。

何故かその時思い出した。

そしてSさんは口を開いた。

「アレは良くないモノなの。
上手く説明できないけど…」

Sさんはもどかしそうに眉を歪ます。

「今日は一生に一度の卒業式でしょ?
君は最近特に疲れてたみたいだから、
そういうのが重なって…

ほんとに上手く言えなくてごめんなさいなんだけど、
ああいうモノが現れるとしたら、
それはきっと一生に一度の日の、
例えば今日みたいな、
卒業式のあとなんじゃないかな」

言い終わったSさんは、
心配そうな顔をしていた。

そして、かすかに震えているのに気付いた。

その時は恐怖と興奮で頭が混乱し、
詳しく問い質すことは出来なかった。

でも頭のどこかで、何となくだけど、
そんな事もあるかも知れないなと、
不思議と腑に落ちていた。

恐怖でまともに頭が働いてなくて、
何でもいいからとにかく納得したかった、
てのもあるけどね。

とにかく俺はSさんに救われたわけで、
何とか感謝の気持ちを伝えたかった。

でも俺はいかんせんテンパっていた。

「SさんてTと付き合ってるじゃん?
何でSさんなんだろって正直不思議だったんだけど、
今日なんでSさんなのか分かったわ。

Sさんて、マジでイイ女だと思った。
…今日は色々ありがとう」

俺の失礼な謝意に、
Sさんはびっくりしたような顔になって、照れて、
それから「ん?」という顔になって、
そして爽やかに笑った。

「褒められたんだか貶されたんだか」

Sさんはそう言って笑った。

よせばいいのに、俺はまだ話し続けた。

それこそまだ椰子の実のヒトガタにとり憑かれているように(笑)

例の『精子の件』を褒め称えたのだ。

あの時のSさんは気高かったと。

Sさんはオーマイガッという表情をして、

「そんなこと思っても言わなくていいわよ」

と真っ赤になって言った。

それ以後、
Sさんとは会えずじまいでいる。
(成人式は地区違いで同窓会も開かれてない)

結局、椰子の実のヒトガタの正体は分かっていない。

後日談ではないけど、
あの一件以来、人間関係で挫けそうになった時、
このことを思い出して自分を奮い立たせている。

「何も怖いものがあるかー」

ってね。


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