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酷暑のあいだ、
犬の散歩は毎朝5時と夜8時に出ていた
(それでも30度という過酷な日もあった!)
散歩コースの一部(約400m)は、
左手に鬱蒼と暗い公園、
右手は病院の高いコンクリ塀という陰気な裏道なのだが、
夜間にここを通ると、5回に1回ぐらい道の遙か向こうから、
白っぽい寝巻姿のガリガリに痩せた爺さんが歩いて来るのが見える。
モノクロ写真をセルにこすり移したような頼りないヒラヒラの透明感があるので、
たぶん幽霊か幻覚だろうと思いつつ、
足元の犬に目をやって、道を半分以上過ぎたところで目を上げると消えている、
というのがいつものことだった。
そうやって簡単にやり過ごせる種類の相手だったので、
さして恐怖も感じていなかったのだが、
ある日、犬から目を上げると、老人が10mほど先から歩いて来る。
瞬間ザッと全身がケバ立ち(近くで見ると典型的な幽霊に思えた)、
この野郎、犬に手を出したらタダじゃおかねえぞと身構えたが、
爺さんはこちらを一顧だにせず、ただ黙って通り過ぎて行った。
あまりにも完璧に無視されたので、
幽霊には現実世界が見えないのだろうか?と首をかしげた奇妙な体験だった。
ちなみに、うちの駄犬は霊感ゼロらしく、
爺さんがいてもいなくても平然と道端でションベンをしている。
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