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友人の話。
彼がまだ幼い頃、
神社の裏山でよく遊んでいたという。
その日はカブトムシを探すのに夢中になってしまい、
気が付いた時には辺りはすっかり暗くなっていた。
一人だったものだから心細くなってしまい、
小走りで帰ることにした。
麓への山道を駆けていると、
下の方から誰かが登って来るのが見えた。
古めかしい提灯を持った和装の男性だった。
足を緩め、ゆっくりと行き違いながら
「こんばんわ」
と挨拶をした。
男性はゆるりと会釈を返してき、
その時初めて顔が明るく見えた。
男性の首から上にあったのは、
真っ赤な魚のものだった。
夜店の金魚掬いで見たランチュウにそっくりだったという。
唖然とする友人を残し、
ランチュウの人はするすると山奥へ進んでいく。
その姿が見えなくなってから、
彼は全力で山を走り下ったそうだ。
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