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山仲間の話。
一人で入山していた、初夏の朝。
目が覚めてから、
朝の空気を吸いに顔をテントの外へ突き出してみる。
そこに見えたのは、
記憶にあった山の風景ではなかった。
辺り一面、
見渡す限り金色の海が広がっている。
たわわに実った稲田の真ん中で、
彼はキャンプしていた。
テントの中に顔を戻し、
混乱した頭を必死でまとめようと努力した。
……駄目だ。
何故自分がこんな場所にいるのか、
さっぱりわからない。
季節も場所も、
まったくあり得ない状況である。
とその時、
テントの外から間延びした声が掛けられた。
「あー、間違えた間違えたー。御免、御免よー」
誰だ今の!?
慌ててもう一度、顔を入り口から突き出す。
そこは記憶通りの、
新緑に覆われた山の風景に戻っていたという。
周りには誰の姿も確認できなかった。
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