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親戚の話。
幼少の時分、
薪で風呂水を沸かすのが彼の仕事だった。
裏山に干してある薪を母屋まで持っており、
そこで割ってから火を点けていたのだという。
竈の火を見ながら、
よく昼間獲ったイナゴを竹串に刺して炙っていた。
おやつ替わりに囓っていたのだという。
その日も何匹目かのイナゴを串に刺し、
火の中へ突っ込んだところ、
いきなりグイと強い力で引かれた。
「あっ」
と思う間もなく、
イナゴは竹串ごと竈の中へ引きずり込まれた。
しばらく火を睨んでいたが、
別に何の異常もなかった。
しかし気味が悪くて、
その日はそこでイナゴをつまむのを止めた。
風呂は問題なく沸かせたということだ。
「その後も何回か、
竈にイナゴを盗られたよ。
でもまぁ、馴れちゃったというか、
気にしなくなっていたな。
小学生に上がる頃には灯油の給湯器になったから、
あの竈も潰してた。
あれって一体何だったのかな」
彼は懐かしそうな顔でこの話をしてくれた。
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