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アメリカで聞いた話。
山を下りている最中で道に迷い、
奇妙なトウモロコシの畑に入り込んでしまった。
背の高いその姿形は、
間違いなくトウモロコシである。
しかしその皮から覗いている実は、
そのどれもが真っ黒に染まっていた。
気味が悪く思え、
早くここを抜けて開けた場所に出ようと、
足を速めた。
すると、
何か大きな物が後ろからついてくる音が聞こえてきた。
そいつはトウモロコシを掻き分けながら、
着実に彼との距離を詰めてくる。
追われる恐怖に襲われ、
必死でトウモロコシの中を駆け出した。
背後の音はピッタリと彼についてくる。
もう少しで追いつかれるという所で、
やっとトウモロコシ畑を抜けることが出来た。
足を止めずに顔だけ後ろに向け、
何が追い掛けて来ているのか確認しようとした。
「……あれ?」
背後には開けた草原が広がっているだけだった。
草の丈は彼の踝より低く、
遠くの方まで見渡せた。
そのどこにも、
黒いトウモロコシの姿は影も形も見えなかった。
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