スポンサーリンク
知り合いの話。
実家の持山に入った時のことだ。
うっかりと下りる筋を間違えたらしく、
見覚えのない広場に出た。
刻は既に夕暮れで、
「暗くなる前に知った道に戻らなければ」
と焦っていた。
方角を確認し歩き出そうとすると、
プンとした匂いが鼻に届いた。
彼は過去に大型犬を飼っていたそうだが、
その獣臭によく似ていたという。
目を凝らすと、
広場の奥まった藪中に小さな社があるのに気が付いた。
傷んだ社の前には、
毛むくじゃらの何かが蹲っていた。
臭いが更にキツくなり、
その後に唸り声が聞こえてきた。
何物か正体はわからないが、
怒っている!?
次の瞬間、
強い風が全身に吹き付けてきた。
フワリと身体が宙に浮き、
そのままコロコロと地面の上を転がる羽目になる。
恐る恐る身を起こしてみると、
そこは自分の見知った山道だったそうだ。
その後、
何度かあの広場に行ってみようとしたが、
未だ辿り着けていないという。
- 関連記事
-
スポンサーリンク