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先輩の話。
陽が落ちて暗くなった峠道を下っていると、
前方の闇の中に明かりが浮かび上がった。
誰かが提灯みたいな物を手にして、
先輩の名前を頻りに呼んでいる。
「こんな場所で誰だろう、
知り合いかな?」
誰何の声を掛けながら用心して近寄ってみると、
不意に足を踏み外しそうになった。
いつの間にか深い崖に向かって
落ちそうになっていたのだ。
落ちずに済んで思わず安堵の息を吐きながら、
顔を上げてみた。
もう何処にもあの明かりは見えなかった。
不気味なのは、
提灯の点っていたと思われる地点が、
崖上の空中だったことだ。
「質が悪い」
と悪態をつきながら本来の道に戻り、
そのまま下山したという。
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