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山で恐ろしいものに遭遇した話。
『子供だけで入っちゃいけない』
と言われてる山があったんだが、
中学1年のとき、
友達と2人で探検しに入ったことがある。
まあどこであっても
子供だけで入っていい山なんてのはないと思うが、
そこはちゃんと誰かが所有してる山で、
入口の方はキノコ栽培とかしてるし、
渓流釣りに行くおっさんたちは
そこを通って行くって親父も言ってた。
その
『大人だったら危なくはないけど子供は怒られるような場所』
っていうほどよいスリルに惹かれて、
日曜日の昼に探検を決行したんだ。
キノコ栽培のところにも誰もいなくて、
山の匂いと、静けさで、
ドキドキわくわくしながら、
「川を目指そう!」
って言って歩いた。
で、木の枝をかき分けて
ミシミシバキバキ音立てて歩いてたら、
川の流れる音がちょっと聞こえるくらいまで歩いた頃に、
かたいもの同士をぶつけるような音がうっすら聞こえてきた。
あ~やっぱり大人がいるのかな、
と思ったけど、
「引き返すのもつまんねえから、
怒られてもいいから川まで行ってすぐ帰ろうか」
って言って、
そのまままっすぐ突き進んだんだ。
川が見えて、
次に目に入ったのが、
長靴はいたオッサンと赤い岩。
釣りのときに道具を置いたり、
安定した足場として使ったりするようなひらべったい岩に、
何かぐちゃっと血が広がってる……異常な光景だった。
人間だとは思わなかったけど、
赤い色ってのは尋常じゃなく目立つもんで、
量からして魚なわけねえなと思いながらも、
「何あれ」
「やばくね」
「あわてんな」
とか言いながら、
しっかり見える位置まで俺たちは歩いて行った。
で、見たら、犬だった。
犬を解体している。
ぐちゃぐちゃに見えたけど、
顔と尻尾はあって、
腹を開いてあるから、
なんつーかちゃんとした解体作業?みたいだった。
でも、犬って、
殺される対象としてのイメージなんかないから、
うわっ……と思って、
友達も顔をひきつらせて、
2人で無言のまま見てた。
茶色っぽい、
耳垂れてる犬いるじゃんか、
ゴールデンレトリバーみたいな、
あんなに大きくなかったと思うんだけど、
でもどう見ても確実に犬だった。
おっさんがこっちを見た。
ヒゲ生えてて、
タオル巻いてて、
白いTシャツで、
よくいる現場のおっさんみたいな人だった。
おっさんはニコッと笑顔になって、
「おっ?なんだ、見てくか!?」
と元気よく言った。
友達が何も言わないから
俺が返事しなくちゃと思って、
「あっいいです!!
いいです、すいません!!」
って言って、
友達の背中を叩いて、
すぐ引き返した。
走ったら逃げてるみたいだから、
早歩きで、一言も喋らないで
キノコ栽培のところまで戻った。
友達が
「あれ犬だよね…」
と言うので、
「うん、犬だった」
と答えた。
そんなもの見たって親に言ったら、
怒られるどころか警察沙汰になったりするんじゃないかって考えると怖くて、
ガキだったからどうにか納得しようとして、
『犬の解体が仕事の人』ということで結論づけて、
暗黙の了解みたいな感じで、
それからは山に行くことも、
あのときの話をすることもなくなった。
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そのおじさんも、悪気はなかったんじゃないかな。