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杣人に聞いた話。
仕事を終えて軽トラで山道を下っていると、
前方に小さな人影が見えた。
道の真ん中にぼんやりと佇んでいる。
まだ小さな子供らしい。
近づいてみると知人の息子で、
確か小学校に上がる前の年頃だった。
周囲に人の気配は無い。
知人の家はここから数キロ離れたところにあるのだが…
こんなところで何をしているのか?
誰かと一緒なのか?
そんな問いかけにも、
子供は口をつぐんだままで
視線を宙にさまよわせるばかり。
埒が明かないので助手席に乗せ、
車を知人の家へと走らせた。
戸口で呼びかけると女房が出てきたが、
事情を話すと怪訝な顔になった。
「うちの子ならずっと家に居るんですが…」
その声に呼応したように、
奥の部屋から当の息子がひょいと顔を出した。
狐につままれたような思いで車に戻ると、
車内には誰もおらず、
助手席には大振りの木の枝が立てかけられていた。
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