スポンサーリンク
「
リクエスト釣り」の島での体験。
その日師匠(祖母の弟)は用事があって忙しく、
オレは昼飯を食ってから1人で釣りをしていた。
もちろん1人だから危ない所には行かない。
漁港のスロープ近くの釣り場。
すっきり晴れてベタ凪、
浅場で泳ぐ小魚達の影が海底にくっきりと見えるような、
夏休みの午後の釣りだ。
「お~、○○、今日は1人か?」
「うん、今日は師匠は忙しいって」
「そうか~暑いから気を付けろよ」
顔なじみのオジさん達が声を掛けてくれる。
「頑張るよ~」
と返事をしたものの、
ちょっと諦めモード。
潮も悪いし、
ベタ凪過ぎて釣れる気がしない。
『あと1回仕掛け入れて駄目だったら帰ろう』
と、いったん仕掛けを上げてエサを取り替えた。
ふやけたエサを針から外してスロープに投げる。
すぐにコトヒキやヒラアジの幼魚が寄ってきて小競り合い。
『こいつら釣った方が面白いんじゃ?』
と思いながら見ていた。
しばらくボーッとしていたら、
30cmくらいのカマスかボラみたいな
細長い魚の影が幾つか動いている。
ふと
『マジでこっち釣るか?』
と思って見たら、
妙な事に気付いた。
海底に魚の影は見えるが、
魚の本体がどこにも見えないんだよ。
3~4尾の魚の影だけが、
海底にユラユラと動いている。
オレは何となく見ちゃいけないものを見ている気がして
気味が悪くなり、そこで釣りを切り上げた。
祖母の実家に帰ったら、
師匠が遅い昼飯を食っていた。
ニヤニヤしながら
「○○、釣れなかったのか?」
と聞くので、
オレがさっき見た事を話したら、
急に真面目な顔になって
「・・・影ボラか、○○、こっちに来い」
と言って、
仏壇の前に座らされてお祓い(?)された。
その間ずっと師匠は何かブツブツ言っていたが、
内容は聞き取れなかった。
お祓いが終わり、
「もう釣りしたら駄目なの?」
と聞いたら、
「大丈夫さ、
でも今日みたいに影ボラ見た時は釣りは止めろ。
もし間違って影ボラを釣ってしまったら、
海に引き込まれるからな」
師匠はそう言ってニコニコ笑うと、
オレの頭を撫でてくれた。
それ以来、
一度も影ボラを見たことはない。
まあ、都会の濁った海じゃ、
もし影ボラが出ても見えないかもしれないけどね。
- 関連記事
-
スポンサーリンク